ブロードウェイと銃弾と夜更かし
ウディ・アレン『ブロードウェイと銃弾』を観つつ夜更かし。
売れない芝居書き・デイビッドは新しい芝居を書きあげた。しかし、資金が無くて舞台にかけられない!嘆くデイビッドのもとに、協力者が現れた。でも、その協力者はヤの付く自由業のボスだった!しかも、お金を出す条件はボスの愛人・オリーブを芝居の主役に据えることで…!?
以上少女漫画のあらすじ風あらすじ。以下結末もろばれのネタバレございます。
で、マフィアと揉めつつ、曲者の出演者と揉めつつ、オリーブの大根役者っぷりに怒りつつ、リハーサルを重ねて本番の日を迎えるまで、ドタバタと物語は進むのですが、途中からヤク○のボスの愛人のボディーガード・チーチが台本に口を出すようになってきます。そして、最初はその干渉にキレていたデイビッドも、チーチのアイディアの良さに気付き始め、一緒に手を加えていきます。
で、ここで、ほほう。
デイビッドとチーチの立場、というより、作品への思い入れ、こだわり、情熱の強さがだんだん入れ替わってゆくのです。デイビッドは、今回と芝居をヒットさせるには、オリーブの大根芝居もしょうがない、とも考え始めるのですが、チーチは、作品がオリーブのせいで、質の落ちる芝居になることに激しい苛立ちを感じるのです。
そして、チーチはオリーブを殺ってしまいます。わーお。マッドネス。
チーチの芸術への執着は狂気の沙汰の段階に到達していたのです。デイビッドは、そんなチーチを罵倒します。もちろん、芝居より命の方が大切ですから。
だけどなのです。アーティストって全てのことを投げうって、自分の感性で最高の作品を作ろうとする人間のことなんじゃないか?じゃ、チーチは芸術家だ。じゃ、デイビッドはなんなんだ?
僕は、アーティストじゃないんだ、とデイビッドは恋人の前で認めるのでした。きっと自分の中ではうすうす気づいていたことだったのですが。
デイビッドとチーチの心の立場の入れ替わりが可笑しくも、デイビッドが自分は生粋の芸術家にはなり得ないんだ、と認めなければならなくなるのが悲しいのです。
その可笑しさと悲しさが一緒にくっついてごろごろしていました。
夜更かしのお供にもお勧めです。しかしあっさり銃をぶっ放すので、安眠には効きません。